日本で生活していると、夜に一人でコンビニへ行く、駅から自宅まで歩く、近道として公園を通る、という行動が日常の一部になっている方も多いかもしれません。
しかし、オーストラリアでは、その感覚を少し調整する必要があります。
私はビクトリア州警察で勤務していた際、夜間の公園や駅周辺で発生した強盗、凶器を使った強盗、暴行を伴う強盗事件、性犯罪を数多く捜査してきました。
一晩のシフトで、強盗や暴行を伴う強盗事件に複数件臨場することも珍しくありませんでした。
もちろん、これは「ビクトリア州は常に危険」という意味ではありません。
ただ、日本で身についた「駅の近くなら安心」「公園を通っても大丈夫」という感覚を、そのまま海外生活に持ち込まない方がよい、ということです。
日本との違いが特に出やすいのが、駅周辺と公園です。
日本では、駅の近くは人通りが多く、明るく、比較的安全な場所という印象を持つ方も多いと思います。
しかし、ビクトリア州では、駅周辺が必ずしも安全な場所とは限りません。
駅の近くは人の出入りが多い一方で、夜間には酔客、若者の集まり、薬物やアルコールに関連するトラブル、路上での暴行や強盗が発生しやすい場所にもなります。
また、日本の駅周辺のように、常にコンビニや飲食店があり、人の目があるとは限りません。
駅のすぐ近くであっても、周囲に営業中の店舗が少なく、夜間の早い時間帯から人通りが途切れる場所もあります。
そのため、「駅に近いから安心」「大通りに出れば大丈夫」と日本と同じ感覚で判断すると、実際のリスクを見落としてしまうことがあります。
公園も同じです。
昼間は家族連れや散歩をする人が多い場所でも、夜になると人通りが減り、照明が少なく、周囲から見えにくい空間になることがあります。
公園は一般的に、商業施設や駅、店舗前のように防犯カメラが多く設置されている場所ではありません。
夜間は目撃者も少なく、木や遊具、建物、駐車場などによって見通しが悪くなる場所もあります。
ここで日本との違いとして知っておきたいのは、こうした事件が必ずしも大きく報道されるわけではないということです。
ビクトリア州では、強盗や性犯罪が発生しても、すべてがニュースになるわけではありません。
そのため、「ニュースで見ないから安全」という判断はできません。
実際の安全感覚は、報道の量だけでなく、その地域でどのような犯罪が起きやすいのか、時間帯によってどう雰囲気が変わるのかを踏まえて考える必要があります。
2024年の統計をもとに人口10万人あたりで単純計算すると、ビクトリア州の強盗発生率は日本の約44倍です。
さらに、ビクトリア州で記録された強盗のうち約6割は武器を伴うもので、武器を伴う強盗だけを見ても、日本の強盗全体の約27倍という計算になります。
もちろん、ビクトリア州の統計は「被害者数」、日本の統計は「認知件数」であり、集計方法が完全に同じではありません。
それでも、人口あたりで見ると、強盗という犯罪の発生頻度が日本とは大きく異なることが分かります。
夜に一人で歩く必要がある場合は、できるだけ明るく、人通りのある道を選ぶ。
近道よりも、少し遠回りでも見通しのよい道を選ぶ。
公園、駐車場、路地裏、川沿い、駅周辺の人通りが少ない場所は避ける。
歩きながらスマートフォンに集中しすぎない。
イヤホンの音量を下げる、または片耳だけにする。
不安を感じたら、無理に進まず、店や人のいる場所へ移動する。
こうした小さな判断が、リスクを下げることにつながります。
海外で安全に暮らすために必要なのは、過度に怖がることではありません。
日本とは少し違う安全感覚を持ち、状況に応じて行動を変えることです。
