前回の【DV】シリーズでは、ビクトリア州では、結婚している夫婦だけでなく、恋人や元恋人など親密な関係の中で起きる暴力や支配的な行為も、Intervention Orderという保護命令の対象となり得ることをご紹介しました。
今回は、Family Violence Intervention Order(FVIO:家族暴力に関する介入命令)に、どのような条件が付けられるのかを見ていきます。
「接近禁止」だけではない
Intervention Orderは、日本語では「接近禁止命令」と説明されることがあります。
しかし、すべてのFVIOに接近禁止や連絡禁止が入るわけではありません。
命令には、respondent(命令を受けた側)の行動を制限するための条件が記載され、どの条件を入れるかは個々のケースに応じて裁判官が最終的に判断します。
ビクトリア州地方裁判所(Magistrates’ Court of Victoria)
命令を受けた側は、命令の内容によって、
- protected person(保護される側)の財産を傷つけない。双方が共同で所有しているものや、ペットなども含まれる
- protected personの居場所を探したり、後をつけたり、監視したりしない
- protected personについて、インターネット、メール、SNSその他の電子的な手段で情報を公開しない
- いかなる方法でもprotected personへ連絡したり、意思疎通を図ったりしない
- protected personへ近づいたり、指定された距離以内にとどまったりしない
- 自分が命令によって禁止されている行為を、別の人に代わりにさせない
といった条件を課される場合があります。
ここで重要なのは、これらすべてが一律に禁止されるわけではないということです。
接近や連絡まで禁止される命令もあれば、別の条件のみが付けられる場合もあります。
そのため、「Intervention Orderが出ているから絶対に会えない」と名称だけで判断するのではなく、実際の命令書に何が書かれているのかを確認することが大切です。
第三者を使っても禁止事項を行うことはできない
特に注意したいのが、自分に禁止されている行為を、別の人に代わりにさせないという条件です。
例えば、本人が直接連絡する代わりに家族や友人へ伝言を頼んだり、第三者に相手のところへ行ってもらったりすることも、命令内容によっては問題になります。
また、相手を探す、尾行する、監視するといった行為が禁止されている場合には、探偵などの第三者へ依頼して同じ行為をさせることも、禁止された行為を第三者を通じて行ったものと判断される可能性があります。
つまり、「自分ではやっていないから大丈夫」というものではありません。
財産の返還や武器について命じられることも
FVIOでは、「してはいけないこと」だけでなく、申立人が裁判官に対して、respondentに一定の行為を命じるよう求めることもできます。
例えば、
- protected personやその家族の私物を返還する
- protected personの日常生活への影響をできるだけ少なくするために必要な共同所有物を返還する
- 銃器や武器を警察へ提出する
- 銃器に関する許可等や、武器に関する承認・免除を停止または取り消す
といった内容です。
こうして見ると、FVIOは単に「相手に近づかない」ためだけの命令ではないことが分かります。
その事案で何を防ぐ必要があるのかに応じて、必要な条件を組み合わせて安全を確保するための制度です。
私がビクトリア州で実務に携わる中でも、個々の状況や危険の内容に応じて、必要な保護条件を設定できることは、この制度の重要な特徴の一つだと感じてきました。
命令書の内容を確認することが重要
Intervention Orderが出されたこと自体で、刑事上の有罪判決や前科が付くわけではありません。
一方で、命令に記載された条件に違反すると刑事事件となり、警察による逮捕や起訴につながる可能性があります。
そのため、「接近禁止命令」という日本語の呼び方だけで内容を判断するのではなく、実際の命令書に何が禁止され、何が求められているのかを一つずつ確認することが重要です。
同じFVIOであっても、条件はケースによって異なります。
※本稿はビクトリア州の制度について一般的な情報を紹介するもので、個別の法律相談を目的とするものではありません。
